ananxxxのJUNK STORY

勉強していること、気になったことを書きます。ガラクタのような文章が、誰かの心に届き、共有できると嬉しいです。

アーミテージ&ナイ白熱討論に行ってきた。

 10月27日(土)に早稲田大学の大隈講堂で開催された、「新アジア戦略・アーミテージ&ナイ白熱討論」へ参加してきました。日本経済新聞社と早稲田大学ビジネススクールとの共催で開かれ、約2時間、日中・日韓・日米関係について、両氏との間でパネルディスカッションや学生との討論が行われました。私は初めて、生で両氏をお目にかかったのですが、何よりもまずアーミテージ氏の貫禄に驚かされました(上半身の大きさが人並みを超えていてハンパないww)。さすが、ベトナム戦争へ従軍した経験を持つ、元海兵。モデレーターは春原剛氏(CSIS客員研究員、日経編集委員)が務め、最近の東アジア情勢について議論が交わされました。ここでは、私が記した当日のメモ(100%事実に基づいた内容でないことは、ご容赦いただきたい)をもとに、討論会の内容に触れ、その後、私のささやかな意見を述べたいと思います。

【メモ】

・ナイが日本に興味を持つようになった経緯。

→ナイ「1970年頃まで日本にほとんど関心が無かった。あるとき、日本の外務省か らの招待で日本を2週間訪問する機会を得た。外務省の人は無料で好きなところへ招いてくれた。そのとき、私は、京都などに訪れたのだが、日本の文化や自然に感銘を受けた。まさにこれが、ソフトパワーであると。それ以来、世界における日本の役割や日本とアメリカが連携して、世界の諸問題へ対応していくことの必要性を実感した。」

・両氏が今回、訪日・訪中した経緯。

→ナイ「ヒラリー・クリントンの要請で北京と東京へ訪問した。目的は3つことを伝えるためだ。一つは、領土を廻る歴史認識と米国の立場を伝えるためだ。1890年に関しては、中立だった(メモから察するに、1890年とは魚釣島が沖縄県の管轄へ移行した年を示しているのでは)。しかし、現在のクリントン・パネッタは中立でない。要するに、尖閣日米安保の対象である。二つ目は、コミュニケーションの改善だ。タテ(国内)とヨコ(日中間)のコミュニケーションを明確にせよ。(つまり、問題が発生したときの、ガイドラインをしっかり決めておきなさい、という指摘)。そして三つ目が、ナショナリズムの危険性だ。政治家は国内基盤の獲得のために、しばしば外交政策を利用する。こうした行為は、世界の利益を損なうことになる。」

 アーミテージ「政府の人間ではないが、日中関係の改善に少しは役に立つのではないか、と思い訪問した。中国からみたら、日本が右傾化しているように写っているそうだ。第二次世界大戦後の日本の体制を少しずつ壊しているのではないか、という疑いを持っているようだ。しかし、一方で中国は、領土を廻る対日強硬姿勢から見られるように、日米同盟にくさびをいれようとしている。日本は、一級国家で在り続けるのか。それとも成長を脱するのか。これからよく考えていただきたい。」

・米国は本当に尖閣を守ってくれるのか。

アーミテージ「米国は守る。しかし、質問の仕方がおかしい。日米が共同で対処し、日本が何をすべきかを考えるべきだ。日本が戦う覚悟を持たなければ、不平等だ。戦争を無くすためには、戦う準備をしておくべきだ。」

尖閣をどう管理していくべきか。

→ナイ「英国のエコノミスト誌の記者が言っていたが、尖閣は日本の領土ではありながら、海洋保護区として開発をすすめることも名案だ。6キロ平方メートルの岩礁から よりグローバルな価値ある財にすることができる。こうした取り組みは、日本をより広い大義のために使え、まさにソフトパワーである。」

アーミテージ「中国に対し、間違った行動であることを教えるべきだ。」

・日韓関係について。

アーミテージ「心配。歴史を克服できていない。」

 ナイ「韓国からすると一世紀以上にも及んだ植民地支配の被害意識が根強い。日本は活力ある民主主義国家であり、ソフトパワー国家であるべきだ。だから、河野談話を歪めることや靖国参拝は、韓国に対して植民地支配を想起させることにつながる。私はこれらの行為を支持しない。友人として忠告する。」

集団的自衛権を憲法で認めるべきか。

アーミテージ「改憲するのは難しいから、憲法解釈を変えることで認めるべきだ。ジプチでの自衛隊の活動は16ヶ国と共同で海賊対策を行なっているのが現状だ。これのどこが、集団的自衛権の対象でないと言えるだろうか。」

ナイ「認めるために、憲法を再解釈するべきだ。」

・日本の核武装について。

ナイ「支持しない。日米同盟への影響や配備への時間的・金銭的コストを考えるべきだ。陸上配備は固より、海上配備(潜水艦配備)などを考えるとコストがかかる。また、地域の安全保障環境に脆弱性が生じてしまう。」

原発問題について。

アーミテージ「日本の原子力技術は高い。インド・中国・トルコでの建設をサポートしてほしい。」

・ワシントンを犠牲にしてまでアメリカは日本を守ってくれるのか。

ナイ「冷戦時代、ベルリンを守った実績がある。」

・米国にとり、日本を守ることにどんなメリットがあるのか。

ナイ「日本は寛容な国家だ。また、グローバル国家だ。さらに、国際貢献の度合いが高い。こうした国際社会における日本の役割を守っていくことは米国に意味がある。」

                                以上。

 ここに載っていな内容も当日はたくさん話し合われましたが、要点をまとめると以上のような内容でした。書き起こしてみて気づいたのですが、幾分、ナイ教授の話へ偏重しすぎた気がしますね。「ジャパン・ハンドラー」として異名を持つお二方でしたが、当初、僕は彼らに対し、好意的なイメージを持っていませんでした。何かにつけて日本の外交政策へ干渉してくる(時には内政まで干渉してくる)姿が見られ、日本の自主外交を支持する僕にとって退治すべき存在だと考えていたからです。しかし、実際に彼らの討論を聞いてみると、意外に納得できる点が多くありました。国際政治に対する緻密な分析や、日中双方の間に立った平和的で現実的な解決策の提案などには関心しました。また、日本のことを本当に良く研究されていらっしゃるなあ、と思いました。ナイ氏が日本に興味を持つようになったきっかけも心に染み入るエピソードだと感じましたし、アーミテージ氏が憲法解釈の話になったとき、内閣法制局の役割などにも言及されていて、日本のことを本当に好きでなければ、ここまで日本通にはなれないであろうと実感しました。今回の両氏の訪問で提言された内容をもとに、日本政府には尖閣問題解決に向けて、主導的な立場を発揮してもらいたいと思います。